ピンチをチャンスに変えてきた輸送企業
愛知県に、とびきり元気な輸送企業がある。豊橋市に本拠を構える有限会社ISBだ。同社は、わずか4年で、保有車両20台から80台以上に増車。その勢いは止まるところを知らず、年末には、さらに大型車5台を導入する予定で、100台を超えるのは時間の問題である。


- 会社名
- 有限会社ISB
- 所在地
- 愛知県豊橋市細谷町中尾139-1
- 設立年月日
- 2003年4月(創業:1993年)
- 代表者
- 代表取締役 石川 信吾
- 従業員数
- 120名
- 保有車両台数
- 85台
同社は、1993年に石川総業物流として創業。段ボール輸送から事業をスタートしたという代表取締役の石川信吾氏は、自らドライバーを務めながら、地道に事業を拡大。2003年には、現在の有限会社ISBへ社名を改称した。ところが、2008年のリーマンショックが、同社の経営に影を落とす。世界規模で経済が悪化する中で、同社の売上も大幅に減少。石川社長は、経営方針の転換を迫られたという。
「自動車部品向けの段ボールの出荷量が減少し、車両2台分の休車を余儀なくされました。そこで私は、急遽営業活動に奔走。いろいろなところに声をかけて、何とかコンビニや家電の配送業務を獲得。また、同業者の混載便の仕事なども引き受けるなど、どうにか経営を軌道修正することができました」
こうして段ボール以外の積荷も取り扱うようになった同社は、その後、この経験を活かして、大手家具販売業者の家具類や、大手事務機器メーカーの事務什器などの配送サービスも提供していくことになる。一方で、2006年にISBパッケージを創業し、食品や生花、一般雑貨などを梱包する段ボールの加工、組立、梱包作業を行う事業を立ち上げる。

そして2018年、同社は、輸送企業として重要な局面を迎える。石川社長は、将来的な会社の行く末を考えて、新たな輸送業務に挑戦することを決断したのだという。
「実は、大手事業者の物流センター間の商品配送業務を受注することを決めました。配送と言っても、大型車による幹線輸送で、しかも、土地勘のない関東全域が配送エリアです。当初、手探り状態で始めた業務でしたが、後のコロナ禍に伴う巣ごもり需要により、商品の取扱量が急激に増加。この4年間で保有車両が一気に増えました。現在は、厚木営業所が業務全般を担っています」
物流センター間の商品配送業務を確実に遂行することで、飛躍的に業績を伸ばすことに成功した同社。現在は、これら一連の運送事業と段ボール加工事業を事業の柱として位置づけ、安定した経営基盤を築き上げている。石川社長は、リーマンショックやコロナ禍といった経営環境が著しく悪化した際も、決して変化を恐れず柔軟に対応し、リーダーシップを発揮する中で、ピンチをチャンスに変えてきたのだ。



安全確実な運行を支えるオペレーションセンター
現在、同社は傭車を含め、1日200台分の運行をコントロール。協力会社は50社以上に及ぶという。厚木営業所で指揮を執る部長の粕谷一成氏に、業務の特徴について、お話を伺うことができた。

「この仕事は、荷捌きや検品などの作業はありません。センターに到着したら車両をドック付けし、カゴ台車に積まれた商品を迅速に積み降ろしします。その時間、わずか15分ほど。荷役作業が少ない上に、ほぼ荷待ち時間もないので、運送事業者にとっては理想的な業務と言えるでしょう。ただし、分刻みで入出荷時刻が定められているため、配車担当者には、高いレベルの配車能力と運行管理能力が求められます。したがって、厚木営業所では、優秀な配車担当者3名に配車及び運行管理を任せています」

また同社では、石川社長の発案で、1年前に24時間体制のオペレーションセンターを本社敷地内に開設。日中は2名、夜間は3~4名のオペレーターが対応する。すべてのドライバー(傭車を含む)に、出発・到着の報告を行うよう義務づけているとのこと。もちろん、渋滞や事故などのトラブルが発生した場合も、必ず報告することがルール化されている。ドライバーから報告がないときは、オペレーターからドライバーに直接連絡して状況を確認する。オペレーターでは対応できない事案が発生した場合は、配車担当が引き継ぐことになっているそうだ。この体制を敷いてから同社の運行トラブルは大幅に減少。ドライバーからも安心して乗務できると好評なのだという。同社のオペレーションセンターは、日々の安全確実な運行を支えていると言えるだろう。

ドライバーファーストで2024年問題もクリア
同社は、ここ数年で従業員が数倍に増えたそうだが、組織の結束力は非常に高いという。センター間の配送についても、まず従業員に挑戦する意義を説明し、その上で賛同を得て、参入を決めたそうだ。それを裏づけるように、課長の佐々木 義人氏は、次のように話された。

「管理職に就いたとき、社長からは『つねにドライバーファーストでありなさい』と言われました。実際に、当社は、とてもドライバーを大事にする会社ですからね。社員が増えても、それが変わることはありません。だから当社は、30~40代のドライバーが多く、離職率も非常に低い。在籍するドライバーから評判を聞きつけて入社される者も多いので、ほとんどドライバー不足に陥ったことがありません」
同社のドライバーファーストは、単に掲げているだけのスローガンではない。ドライバーは4日働いて2日休める勤務体制を敷いており、労務管理を徹底。いわゆる2024年問題も早々にクリアしているそうだ。


車両の洗車の様子など、管理者がスマホで確認し、熱心なドライバーを表彰。
広い視野で新たな輸送ビジネスへ挑戦
ハード面の安全対策としては、安全性能、耐久性に優れたいすゞ車を積極的に導入すると共に、全車両に「MIMAMORI」を導入しているという。「車両位置お知らせサービス」による運行管理に加え「運転日報」の評価点や運行データに基づく、運転指導も行っているとのこと。


「事業が拡大する中で品質や安全を維持していくことは難しくなりますが、創業時から、ぶれずに実践してきた実直にルールを守ることで、従業員の意識を高め、提供するサービスの質を向上させていきたいと思います。ルールを守ることは当たり前のことですが、それは“自分自身、家族、お客様”を守ることにつながるのだと、常々従業員に伝えています。そうすることで、当社も将来にわたって発展することができるからです。もちろん、真面目なだけではなく、つねにアンテナを張り巡らせていなければだめ。当社は、つねに新しいことに挑戦し続ける中で、社会から必要とされる会社をめざしています。今後の事業展望としては、中部を中心に関東と関西をつなぐ拠点を増やしていきたいですね。まずは、地場の事業体制も強化するため、愛知県弥富市に営業所を開設する予定です。また最近では、イベントに関わる物品の輸送や修学旅行の旅行カバン輸送なども手がけており、新たな輸送ビジネスとして業務を拡大していきたいと考えています」
と最後に語られた石川社長は、現状に甘んじることなく、事業を推進し、絶えず成長していくことを思考している。大きな夢や高い目標を掲げて、追い続けられるところが、石川社長の経営者としての才覚なのである。
※掲載内容は2022年10月1日取材時点のものとなります
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