東ヶ峰運輸株式会社

従業員が健康に安心して働き続けられる会社をめざす

茨城県水戸市に本拠を構える東ヶ峰運輸株式会社は、自動車部品輸送や地場の路線便の集配及び拠点間輸送を請け負うなど、経営の安定化に努めてきた。近年は、コンプライアンスを重視した経営に舵を切り、従業員が安心して働ける職場づくりを推進。五来社長は、時代に即した健全な経営をめざし奮闘中である。
※掲載内容は2023年4月1日取材時点のものとなります

企業として持続可能なコンプライアンス経営へ

1974年に設立された東ヶ峰運輸株式会社(当時は有限会社)は、百貨店の配送業務から運送事業を開始。当初は小型車で家具などを運んでいたそうだ。その後、茨城県内に製造拠点を構える大手化成メーカーの自動車部品(成形品等)の輸送業務を受注。国内は安定経済成長時代を迎え、自動車の需要が増大。同社の仕事量も次第に増え、長距離輸送も手がけていくことになる。さらに1992年、顧客の製造拠点が筑西市に移転したことを契機に、同社も、その近郊に下館営業所を開設する。同拠点の自動車部品の輸送業務を一手に引き受けることになったという。こうして、自動車部品輸送のエキスパートとして、経営基盤を築き上げてきた同社。その後も、地場の路線便の集配及び拠点間輸送を請け負うなど、経営の安定化に努めてきた。現在は、本社(水戸市)・車庫(笠間市)とは別に県内2カ所(水戸市、筑西市)に営業所を設け、地場及び関東一円で運送事業を展開している。

本社オフィス(茨城県水戸市)
自動車部品輸送のエキスパートとして成長してきた東ヶ峰運輸は、来年に創業50周年を迎える。看板は創業当時のもの。

社長を務める五来一氏は、大学卒業後、いすゞロジスティクスに入社(当時はいすゞライネックス)し、栃木工場で3年、本社で3年勤務され、物流業務全般の知識を身につけたそうだ。東ヶ峰運輸に入社後は「まずは現場から」と、ドライバーを5年務め、その傍ら、父親である先代社長(現会長)の下でマネジメント業務に従事。そして36歳の若さで社長に就任された。現在は、茨城県トラック協会青年部会の副部会長も務めるなど、地域における事業の適正な運営、健全な発展を促進する活動にも取り組まれている。いま多くの運送事業者が、大きな岐路に立たされている、と五来社長は話す。

「近年、働き方改革関連法が施行されるなど、運送事業者を取り巻く経営環境が大きく変わりつつあります。そもそも運送業は、長時間労働が常態化しやすく、働き方改革が難しい業種ですが、見方を変えれば、法令を遵守できない事業者は、淘汰されるリスクを抱えていると言えます。つまり、従業員が健康に働けない会社に未来はないということ。これからは、従業員の安心と、お客様の信頼を両立できる事業体制を構築することが、経営の最重要課題になります。最近は、お客様の方から『2024年問題は大丈夫?』と、声をかけていただくこともありますね。当社としては、従業員の健康を第一に待遇改善に取り組み、持続可能な事業体制を築き上げていきたいと考えています」

会社概要
代表取締役 五来 一 氏
会社名
東ヶ峰運輸株式会社
所在地
茨城県水戸市大塚町1395-3
設立年月日
1974年3月
代表者
代表取締役 五来 一
従業員数
90名
保有車両台数
91台

コンプライアンス経営へ向けて、経営の舵の大きく切った五来社長。時代に即したリスクマネジメントによって、輸送企業としての質を高めると共に、自社の競争力強化に努めていく方針である。

顧客と協議を重ね、労働時間短縮を実現

長時間労働が当たり前だった悪しき習慣を変えるため、五来社長が、最初に着手したのが、現状の労働時間を正確に把握することだったという。全車両に装備された、いすゞの商用車テレマティクス「MIMAMORI」の労務管理機能を活用して、ドライバーの運行スケジュールを調整。また、運転日報で運行ごとに休憩時間もチェックしているとのこと。事業体制も抜本的に見直し、長距離輸送からは完全に撤退。法定の労働時間に抑制できる地場を中心とした関東一円の輸送に絞ったという。

「お客様には、待機時間の短縮、高速道路の使用、運賃改定、燃料サーチャージの導入についてご理解いただけるよう丁寧にご説明してきました。昨今は、ドライバーにのしかかる重い負担によって、物流が成り立っていることが周知されてきたこともあり、多くのお客様に労働時間短縮に向けた取り組みにご協力いただけています」

と語られた五来社長。さらに同社では、ドライバーが安心して働けるように、通常の定期健康診断受診(夜間勤務者は年2回)の実施に加え、脳ドッグでの検査(会社で費用負担)も受けさせている。五来社長は、物流を支えるエッセンシャルワーカーを魅力ある職種にしたい、という想いがある。

ドライバーに好評な広々とした室内と、乗り心地の良い高機能シート(大型トラックギガ)

「遠隔点呼」を導入し、運行管理体制を強化

昨年11月、同社は以前から利用してきたIT点呼に代えて「遠隔点呼」を導入したそうだ。「遠隔点呼」とは、昨年4月にスタートした制度で、要件を満たした機器・システムの使用を条件に、遠隔拠点間の点呼を認めるというもの。機器・システムの高度化に伴い、非対面点呼の導入条件を緩和すると共に、ICTを活用した運行管理の利用を促進する狙いがあると言われている。五来社長に、導入された経緯についてお話を伺うことができた。

「夜間運行も多い当社では、点呼者の業務負担を軽減すると共に、労務費を削減するため、いち早くIT点呼を利用してきました。ただし、従来のIT点呼は、営業所ごとに利用時間が連続して16時間以内という制限が設けられています。その点『遠隔点呼』は、時間制限が廃止され、24時間実施できますし、今後は『遠隔点呼』が主流になると考え、導入することを決めました」

申請時は、県内での導入例が少ないということもあり、国土交通省の職員がシステム要件の審査に訪れたという。また、導入後は、茨城県トラック協会の職員や同業者が運用状況を視察することもあるそうだ。同社の「遠隔点呼」は、茨城県のモデルケースとなっている。

遠隔点呼でドライバーの健康状態を確認

自社の強みは徹底した安全運行

現在、同社の車両保有台数は91台。その多くがいすゞ車である。ドライバーは、操作がしやすく、乗り心地も良いと、いすゞ車に乗務したがるそうだ。社長に就任して以来、安全運行に注力してきたという五来社長は、いすゞ車の安全性能を高く評価しているとのこと。安全運行こそが、自社の最大の強みだと話す。

「お預かりした製品を確実にお届けすることが運送会社の使命。そのベースとなるのが安全です。法令遵守及び安全教育を徹底することで、輸送サービスの質を高めてきました。具体的には、ドラレコや事故事例に基づいたKYT活動のほか、日々『MIMAMORI』の運転日報(評価点)やレポートを活用してドライバーを指導しています。

動態管理画面(上)車両レポート(右)
全車に「MIMAMORI」を装備し、運行管理、安全運転指導などに活用

また、定期的に車両点検やフォーク作業の研修なども実施。安全は、お客様との信頼関係を深め、同時に従業員にとって働きやすい職場を築くことになります」

事故事例など社内で情報共有化
フォークリフト作業研修(年1~2回)を実施

従業員が安心して働ける会社をつくる

コンプライアンスを念頭に、自らアクションを起こして、従業員の安全意識を高めてきた五来社長。大きな転換期を迎えた運送業界の未来を見据えて、進むべき道筋を切り拓いてきた。

代表取締役 五来 一 氏

「コンプライアンスを重視した経営や安全への取り組みは、あくまで従業員一人ひとりが安心して働ける会社をつくるための手段に過ぎません。当面は、2024年問題を確実にクリアできるように、しっかり事業体制を構築していく所存です。福利厚生を充実させると共に、業界未経験者でも働ける人材育成環境の整備も進め、慢性的な人材不足を解消していきたいと考えています。運送会社が社会の土台を支える、やりがいのある仕事であることを、もっと世の中に発信していきたいですね。運送業界は、真面目に一生懸命に働いている人たちが大勢います。そんな従業員たちに重い負担を強いるようなことはあってはならない。業界の常識に縛られることなく、当社ならではの働き方変革を進めてまいります」

と真剣なまなざしで語られた五来社長。こうした想いは顧客にも伝わり、少しずつ変化の兆しが見えてきたという。来年、創業50周年を迎える同社。五来社長は、先代社長が築き上げてきた会社を、さらに発展させていきたいと意気込む。その強い決意を胸に、運送業界の新しいステージへ向けて走り出している。

※掲載内容は2023年4月1日取材時点のものとなります

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