国内物流企業として物流ソリューションを提供
「学生時代、働いた分以上に評価してくれたアルバイトがありました。それがアート引越センター株式会社(当時は寺田運輸)の引越業務です。社員旅行にも連れて行ってもらいましたからね。現場でお客様に喜ばれ、会社から感謝され、私自身も仕事が楽しくて、まさに引越業は“三方良し”の仕事だと思いました」
と当時を振り返りながら語られたのは、現在、アートバンライン株式会社において代表取締役社長を務める木谷誠二氏だ。数年間、引越のアルバイトを続けた木谷社長は、大学卒業後、地元(広島市)に帰郷して就職するも、アート引越センターが広島へ進出すると同社に転職。以来、事業拠点を転任しながら運行管理や営業、店舗運営、新規店舗開発などに従事する。そして、1997年8月にグループ企業のアートバンラインの設立に携わり、同社の専務を経て、2017年に社長に就任した。あらためて木谷社長に、同社を設立した経緯についてお話を伺った。
「当社は、引越サービスのリーディングカンパニーである、アート引越センター100%出資の国内物流企業です。グループ内では、引越業務の支援と共に、年々増加する一般貨物の取り扱いを担うことを目的に設立されました。当初は、車両30台で引越業務から運送事業をスタート。その後、一般貨物の輸送業務が拡大する中で、大阪府(茨木・舞洲)、千葉県(習志野)、神奈川県(海老名)に、大規模な物流拠点を設立してきました。当社の物流拠点は、在庫の商品管理や入出庫管理に最先端のITシステムを導入。輸配送事業と効果的に組み合わせることで、お客様に最適な物流ソリューションを提供しています」

- 会社名
- アートバンライン株式会社
- 所在地
- 大阪市中央区城見1-2-27
- 設立年月日
- 1997年8月19日
- 代表者
- 代表取締役社長 木谷 誠二
- 従業員数
- 1,554名(2023年1月末現在)
- 保有車両台数
- 1,361台(2023年1月末現在)
現在、同社の売上の約70%は、引越以外の輸送業務が占めている。積荷の内訳は、家電や家具(組立・設置含む)、飲料水、住宅設備品、空調機器部品の輸配送、特積み貨物の拠点間輸送などだ。車両保有数は1,300台を超えており、その機動力を活かして、スムーズで迅速な輸配送を実現している。また、倉庫事業(4拠点)では、顧客ニーズに応じて各種流通加工サービスを提供。さらに、顧客の要望に応えて物流業務を熟知した人材をタイムリーに派遣している。支店は、派遣事業所を含め全国に38拠点あり、独自に物流ネットワークを構築。今現在も着実に業績を伸ばし続けている。


ちなみに、アートグループの2023年度のスローガンは「Jump Together/アートらしく あたらしく」。アートグループ一丸となって、さらなる躍進をめざす。


自社最大規模を誇る大型物流センターが稼動
昨年8月、同社は、4棟目となる大型物流センター「海老名ロジスティクスセンター」(神奈川県海老名市)を開設。5年ほど前から、一般貨物の拡大を成長戦略として位置づけてきたという木谷社長は、総合効率化計画の認可を得ることで国から支援が受けられる「物流総合効率化法」を活用して、同センターを建設したという。

- 所在地:
- 神奈川県海老名市
- 鉄骨造/2階建て(高床式/常温倉庫)
- 【倉庫】
- 1階 5,933m²(1,798坪)
直天井 7,100mm
2階 7,100m²(2,151坪)
直天井 6,720~6,200mm
- 【アクセス】
- 車:圏央道海老名ICより約2.5km
産業道路/県道46号沿い
「引越業は2勝10敗なんです。繁忙期は3、4月の2カ月間のみ、残りの10カ月は閑散期。しかも、週末と月末に仕事が集中します。これでは、事業のリソースである人や車両を増やすことが難しい。そんなとき『働き方改革関連法』が施行(2019年)されました。運送業にとって最大の課題である長時間労働問題に“待ったなし”の状況が訪れたのです。そこで、一般貨物の取扱量を拡大することで、事業体制を再構築。同時に従業員の勤務体系も見直しました。その一環として建設したのが、海老名ロジスティクスセンターです。敷地及び施設の広さは、共に自社最大規模を誇っています。またセンターは、圏央道や東名高速道路へのアクセスが良好で、関東と関西を結ぶ物流拠点として重要な役割を果たしています」

同センターの床面積は約13,000㎡(1・2階分)。全天候型(軒下長さ12.0m)高床式のトラックバースには、大型車22台が接車可能(40Fコンテナ接車可能トラックレベラー2基完備)となっている。倉庫内は、大型貨物用エレベーター2基をはじめ、パレット垂直搬送機3基、パレット・ロールBOX兼用垂直搬送機1基など、最新設備が導入されており、様々な一般貨物を取り扱うことができる。すでに、400台の自社車両と連動した首都圏全エリアの輸配送センターとして稼働しており、この4月からは、大手飲料メーカーの商品の取り扱いを開始。1日に約2,000パレット分を40~50台で配送拠点に運んでいるという。さらに、同センターでは、顧客の生産状況に応じて、チャーター輸送や混載輸送を提案するなど、物流の効率化及びコスト削減に貢献している。


従業員が自慢できる快適に働ける施設に
新たな物流センターの稼動で、事業体制を強化してきた同社。また、同センターにおいては、もう一つ重要な役割を持たせたそうだ。それは、ドライバーを含む従業員にとって、働きやすい職場にすること。具体的には、ゆったりとした事務スペース、厨房付きの食堂、休憩スペース、浴室、洗濯室、仮眠室、社宅(寮:7名)などを完備。アートグループの従業員なら、誰でも自由に利用できるのだそうだ。木谷社長は、自社で進めてきた働き方改革なのだと話す。
「当センターは、首都圏とのアクセスに優れているので、多くのドライバーが利用できる施設にしました。近年、高速道路のサービスエリアなどは、昼夜を問わず混雑していることも少なくありません。当センターに寄ってもらえれば、簡単な食事のほか、しっかり休憩や仮眠をとることができます。従業員が自慢できる施設にしたかったのです」



木谷社長は、昨今のドライバー不足も解消したいと考えているそうで、とは言え、単純に給与が良ければ応募が増えるわけでもなく、離職率が低くなるわけでもない。そこで、ドライバーの負担が少しでも軽減できるように、働きやすい職場づくりを推進しているのだという。
トータルコストを考えた最善の物流サービスを提供
働き方改革と共に同社が注力してきたのが収益力の強化である。これまで木谷社長がトップセールスを行ってきたが、昨年から、新たに営業部門を設けたそうだ。顧客に最善の物流サービスを提供していくことが、物流を担う当社の使命だと、営業開発部でマネージャーを務める藤田雄一郎氏は話す。

「2021年に売上高300億円を突破し、組織的に営業活動を展開することになりました。営業部門は、お客様が抱える課題を分析すると共に要望するサービスをリサーチ。運賃や物流費の値下げを交渉するのではなく、お客様にとって最適な輸送方法や物流改善案を提案しています」
従業員の努力に報いる
最後に今後の展望、事業計画について木谷社長にお話しを伺った。

「社内改革を進めてきた結果、ここ数年間で、車両数、従業員数が倍以上に増大しました。売上高も前期374億円(2022年度)を達成するなど、着実に収益体制を強化してきました。今後も、アートグループが蓄積してきた輸送技術とノウハウ、お客様本位のサービスを提供することで、物流企業として成長していきたいと考えています。当面の目標は、2025年までに売上高500億円を達成すること。その次は利益率10%をめざしていきます。もちろん、会社の利益は頑張ってくれた従業員たちに、間違いなく還元します」
と最後に笑顔で語られた木谷社長は、今も同社の待遇に感激した学生時代のことを忘れていないそうだ。だから、社員とのコミュニケーションも大切にしており、毎朝8時前に出勤して、ネットを利用した朝礼を継続しているという。そんな同社で働く従業員たちの士気は非常に高く、持続的な成長の原動力となっている。
※掲載内容は2023年4月1日取材時点のものとなります
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