組合員は約38万人県内最大規模の生協へ
「新鮮な卵や成分無調整の牛乳など、安全で安心な食べ物を子供たちに」
そうした茨城県水戸市の主婦たちの切なる願いのもと、1971年に設立された、いばらきコープ生活協同組合(当時は水戸市民生活協同組合)は、約500人の組合員から活動をスタートした。
生協とは、「安全で安心な商品が欲しい」「暮らしを良くしたい」といった消費者の様々な願いを実現するため、組合員一人ひとりが「出資金」を出し合って、組合員が事業を「運営」し、組合員みんなで商品やサービスを「利用」する“相互扶助”の組織である。


- 会社名
- いばらきコープ生活協同組合
- 所在地
- 茨城県小美玉市西郷地1703
- 設立年月日
- 1971年10月24日
- 代表者
- 代表理事理事長 柴﨑 敏男
- 従業員数
- 1,310名
- 保有車両台数
- 480台
いばらきコープは、その後、1988年に県内で活動する2つの生協と統合。さらに、1991年には、関東地域の生協連合会であるコープデリ生活協同組合連合会に加盟(6生協が加盟)。連合会が商品開発や仕入れ、物流などを担うことで、利用しやすい価格で、多くの商品を提供できるようになった。現在は、茨城県小美玉市に本部を構え、茨城県全域を事業エリアとし、宅配事業、店舗事業、福祉事業などを展開している。


組合員は約39万人、県内の世帯加入率は約33%、県内最大規模の生協に成長した。掲げる理念は「CO・OP ともにはぐくむ くらしと未来」。一人ひとりが手を取り合って、一つひとつの暮らしを向上させていくことを目的としている。生協へ寄せられる期待や願いを受け止め、地域に寄り添いながら事業と活動を進め、誰ひとり取り残さない、誰もが安心して暮らし続けられる社会の実現・地域づくりに貢献していくという。

供給高(売上高)の約87%を占める宅配事業は「コープデリ」と呼ばれ、地域担当が商品をお届けするサービスだ。一方で、地域の組合員に商品を購入してもらう店舗事業は、県内に4店舗(牛久市/土浦市/ひたちなか市/水戸市)を展開。コープ商品や産直商品など、こだわりの魅力的な商品を取り揃えている。また、いばらきコープでは、近隣に店舗がない、あるいは交通手段がなくて買い物が困難という方々を支えるため、移動店舗(車両)も行っているという。さらに、高齢社会を見据えて福祉事業へも進出。ホームヘルパーの派遣、デイサービスの実施、サービス付き高齢者向け住宅の運営などを通じて、住み慣れた地域で安心して暮らしたい、という組合員の要望に応えている。

付加価値の高いサービスを提供するコープデリ宅配
3人以上の共同購入(配送料無料)から始まった宅配サービスだが、現在は、約7割(毎週約16万人)が個人宅にお届けする個人宅配(1999年から開始)が利用されているという。
仕組みは、毎週届くカタログ(6,000品目以上)や専用アプリで購入する商品を電話や注文書、ネットで注文(翌週に納品)。注文センターが各メーカーに発注した商品は、集品センターで個人別に仕分けされ、宅配センター(県内13カ所)に送られる。そして、地域担当(配送ドライバー約500名)が、車両で組合員宅の玄関先、または指定場所まで商品をお届けする。

食品全般、日用品、雑貨、医薬品、衣類、贈答品、地方グルメなどを取り扱うウイークリーコープは、週1日(月~金曜日)のお届けとなる。もう一方のデイリーコープは、お弁当やおかず、カット済みの食材がセットになったミールキットなどを配達するサービスで、週3回以上(月~金曜日)が利用条件となっている。常務理事の宮本義昭氏は、一般的な宅配便との違いについて、次のように説明された。

宅配事業・福祉事業管掌
宮本 義昭 氏
「コープデリの特長は、決まった地域担当が毎回、同じ日時・場所を訪問するところ。利用者に高齢者や障がい者なども含まれるため、商品をお届けするだけではなく、組合員の安否確認も行っています。コープデリは、宅配の利便性のみならず、組合員やコミュニティを見守る役割も担っているのです」
実際に地域担当が組合員の異変に気づいて、救急車を要請したことで、事なきを得たケースも少なくないという。コープデリ宅配では、離れて暮らす家族などへ、無料で配達情報を知らせる「お届け確認メールサービス」も行っているそうだ。

多田 眞 氏
「いばらきコープは、早くから県内の全ての市町村と『見守り協定』を締結しており、運行中も地域の子供たちや高齢者などの様子に気配りしています。地域担当が、単にドライバーと呼ばない所以がここにあります。コープデリ宅配には、まさに、お金では計れない価値があるのです」
と語られたのは、宅配事業部の多田眞部長だ。地域担当が、地域と人々のつながりを橋渡ししているのである。もちろん課題もあるという。今後はインターネット注文を増やしたいと話されたのは、宅配事業部の大高康史次長だ。

大高 康史 氏
「コープデリeフレンズ(インターネット注文)の利用率は約22%。より多くの組合員の皆様に快適に買い物していただけるように、専用のアプリを開発したり、ネット限定商品を販売したり、インターネットを活用した販売に注力しています」


いばらきコープは4店舗を展開(牛久市/土浦市/ひたちなか市/水戸市)
4月に新店舗がオープン
今年4月、JR日立駅前の商業施設に県内5番目となる、いばらきコープ日立店がオープンする予定だという。これは、日立市と協議を重ねながら進めてきたプロジェクトで、日立市民の期待も大いに高まっているそうだ。総合企画管掌の松尾掌執行役員にお話しを伺うことができた。

松尾 掌 氏
「日立市は、昨年から日立駅前の大型商業施設のリニューアルを進めており、そのテナント(地下1階)として、いばらきコープをご指名いただきました。いばらきコープが提供する新鮮な産直品や、こだわりのコープ商品で多くの買い物客を集客し、街の活性化につなげたいですね」


また、コープ日立店店長の藤澤亮太氏は、県北地域からの集客を見込んでいると話す。

藤澤 亮太 氏
「店舗としては、県内最北の位置になるので、その地域の消費者の皆様に、より良い商品を提供できるよう着々と準備を進めています。市や消費者の皆様の期待にそえるよう魅力的な店舗をつくりたいと思います」
ラストワンマイルをつなぐ
コロナ禍の巣ごもり需要で組合員数は増えたものの、一人暮らしの高齢者が増えるなど、いばらきコープの役割は、ますます重要になると宮本常務理事は話された。
「高齢者世帯が増える中で、社会から孤立しないように、ラストワンマイルで、地域と人々をつなぐことが我々の使命。そのために、自治体とも積極的に意見交換を行っており、加えてICT化によって各種業務や配送の効率化も推進しています。今後も組合員の立場に立って、地域を豊かにする事業活動を進めてまいります」
相互扶助の精神で、事業をとおして豊かなくらしと未来を創造してきた、いばらきコープ。まさに、これは持続可能な社会の実現をめざすSDGsの理念を先取りする活動であり、これからも地域社会で重要な役割を果たしていくに違いない。コープのトラックが、地域の安全と安心、人々の豊かな暮らしを支える、そんな社会が身近に迫っている。

※掲載内容は2023年4月1日取材時点のものとなります
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