有限会社合田運送

収益力は付加価値とスケールメリットで確保

地元愛媛県の青果物や加工食品、製材などを中心に輸送サービスを提供する有限会社合田運送。顧客に安心して任せてもらえるように、付加価値の高い輸送体制づくりに取り組むと共に、従業員一人ひとりが仕事に誇りを持ち、安全に働ける南予地域No.1の輸送企業をめざしている。
※掲載内容は2023年6月1日取材時点のものとなります

会社員から心機一転 父の背中を見て経営者へ

伊予の小京都と呼ばれる愛媛県大洲市に本拠を構える有限会社合田運送。同社で陣頭指揮を執るのは宮河力氏である。2019年、37歳のときに代表取締役社長に就任されたそうだ。

会社概要
代表取締役社長 宮河 力 氏
会社名
有限会社合田運送
所在地
愛媛県大洲市春賀甲584番地6
設立年月日
1961年4月13日
代表者
代表取締役社長 宮河 力
従業員数
35名
保有車両台数
38台
本社(愛媛県大洲市)
大洲市の主要製造業は、食料品加工や木材加工。また南予地方は青果物や水産物の生産地として知られる。

同社は、1961年に隣接する八幡浜市で設立(当時は双岩運送)されたが、1967年に先々代社長(祖父)が同社を買収。その翌年に社名を合田運送に改称した。当初は、西日本有数の水揚高を誇る漁港ということもあり、車両数台で水産物を運んでいた。しかし、年間の水揚げ量によって売上高が浮き沈みするため、なかなか経営は安定しなかったという。そこで会社を引き継いだ先代社長(父)は、南予地域特産の青果物、温州みかんの輸送を開始する。そして水産物輸送からの撤退を決断すると、松山自動車道にアクセスしやすい大洲市に新社屋を建設。さらに、県内で製造されている冷凍食品や業務用の食肉加工品の輸送なども手がけていく。同社の業績は瞬く間に上昇し、車両数も増やしていった。

一方で宮河社長は、当初、家業を継ぐことは考えておらず、大学卒業後は、大手医薬品メーカーに就職。順風満帆な社会人生活を送っていたが、思いかけず転機が訪れたという。

「転勤先が、たまたま愛媛県内となり、遠ざかっていた実家に帰る機会が増えたんです。そこで、あらためて父の働く姿を目の当たりにして、経営者としての強い責任感や、仕事に対して強い思い入れがあることを知りました。当時私は、勤務先で労働組合の仕事に携わり、経営者と従業員の考え方の違いに、いろいろと考えされることも多かったことから、次第に会社の収益だけではなく、ステークホルダーや地域社会を見据えて働く経営者の仕事に強く惹かれるようになりました。また、すでに70歳を過ぎていた父が、ろくに休みをとらず働いている様子を見て、ここまで頑張って発展させてきた会社を、このまま終わらせてしまってよいものか、という葛藤も生まれ、30歳のときに決意して、家業を継ぐ意志を父に伝えたのです。そのとき父は『バカだな、こんな大変な仕事を選んで…』と言って、笑って認めてくれました」

こうして同社に入社した宮河社長は、運送事業者として新たな道を歩むことになった。

青果物と冷凍食品の長距離輸送が強み

現在、同社の主要な積荷は、地域特産の温州みかんをはじめ、生産量日本一を誇る徳島産のニンジン、近県のスイカや高原野菜などの青果物。夏季は、鮮度を保つため冷凍車で運んでいるという。二つ目は、市販の冷凍食品や業務用の食肉加工品など。もちろん、こちらも、しっかり温度管理を行って運行している。さらに、昨年から廃業する運送会社の業務を引き継ぐことになり、木材加工品(建材等)の輸送サービスを始めたそうだ。愛媛県は、県土の約70%以上を森林が占めるなど、木材資源が豊富な地域。大洲市は、かつて木材の一大集積地として栄えた木材の町でもあり、宮河社長は、これからも積極的に木材加工品の輸送も手がけていきたいという。運行エリアは、関東、中部、関西、九州方面の市場や販売店舗、工場などで、長距離輸送を得意としている。また、積荷に応じて徹底した温度管理を実施。高品質輸送が同社の強みである。青果物と冷凍食品の輸送については、すでに30年以上の実績があり、運行体制や積み付け、ドライバーの育成などにおいて独自のノウハウを有している。

高品質輸送と輸送力で高い収益力を実現

同社では、企業理念でも掲げているとおり、顧客第一で事業を展開してきたそうだ。特に青果物の出荷量が多いときは、帰り荷を積まずにピストン輸送で車両を稼動させるなど、赤字もいとわず対応してきたという。それでも、最終的な収支は黒字だと宮河社長は話す。

「当社は、安定した収益基盤を築くため、比較的利益率が高い長距離輸送や温度管理輸送を主要業務としてきました。ことに温度管理輸送においては、冷凍機や管理システムへ積極的に設備投資すると共に、厳格な品質管理、業務に精通したドライバーの育成に努めてきました。また、スケールメリットを得られるように、多くの運送事業者と提携した運行体制を構築。顧客の多様な輸送ニーズに柔軟に対応しています」

付加価値の高い輸送サービスに加え、保有車両の倍以上の稼動率を実現してきたという同社。近年は、労務管理や業務のIT化なども進めているという。

プレイズムだから長距離輸送も安心

保有車両は、ほぼいすゞ車だという同社。会社のイメージ戦略として、車両にはメッキパーツや鏡面加工された観音扉(側面・リヤ)などを採用。車両の美観と清潔感を高めることによって、安心感と高品質感をアピールしているという。また、いすゞ車の優れた性能もさることながら、定期的な整備や緊急時の修理など、アフターサービスに大変満足されているそうだ。車両は大切な商売道具なので、つねに最適な車両(装備を含む)を選んできたと宮河社長は話された。

「当社は、生鮮食品や冷凍食品などを遠隔地まで運んでいるので、車両のアフターサービスを重視しています。特にいすゞ車は、故障の予兆を自動的に察知して、早めの整備を促してくれるプレイズムが装備されているから安心です。運行中の路上故障を未然に防止できますからね。実際に、何度かご連絡をいただいて、車両トラブルを回避できたケースがあります。本当に、ありがたい機能だと思います。安全面では、デジタコやドラレコ、バックアイモニターを全車に搭載。運行中、少しでもドライバーの運転をサポートできる機器を活用していきたいと考えています」

同社では、万一、故障でエンジンが停止しても積荷の品質に影響が及ばないように、冷凍機もサブエンジンを採用。自主的に冷凍機の定期点検も実施している。

車両はいすゞ車を導入。美観、清潔感を保つため、メッキパーツや鏡面加工された観音扉などを採用。

南予地域でNo.1の輸送企業をめざす

同社の近々の課題は「2024年問題」への対応だという。今まさに運行体制や運賃体系について、顧客に提案しているそうだ。すでに、労務管理体制を強化するため、新たなソフトウェアを試験的に導入しているとのこと。また、ドライバーの休息時間を確保するため、フェリーを利用した運行も検討しているという。

「ありがたいことに、当社の事業は拡大していますが、その一方で、ドライバーの確保と、労務環境の整備が急務となっています。現在は、リクルート情報を充実させたホームページを制作したり、働きやすくなる環境づくりを進めたりしています。コロナ禍では、あらためて運送事業者の重要性が再認識されましたが、引き続き地域産業に密着した輸送サービスを提供する中で、規模、能力共に、南予地域でNo.1の輸送企業をめざしてまいります」

と最後に今後の展望について語られた宮河社長。今後とも、事業をとおして地域発展に寄与し、従業員一人ひとりが、仕事に誇りを持ち、安全に働ける会社へ進化させていく方針である。若き経営者の手腕に期待が寄せられている。

※掲載内容は2023年6月1日取材時点のものとなります

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